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インタビュー

Vol.4 

個人の育成、地域の活性化、国の政策 “ひとつひとつ”を大切にすることが、より良い社会に繋がっていく

青山社中株式会社 筆頭代表CEO
中央大学客員教授 朝比奈 一郎氏

Ichiro Asahina

1973年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。ハーバード大学行政大学院修了(修士)。1997年〜 2010年経済産業省。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、筆頭代表・ CEOに就任。若手リーダーの育成を目指し「青山社中リーダー塾」をスタート。(現在6期生の募集中)その他、ビジネスブレークスルーCh、中央大学大学院(公共政策研究科)、G1東松龍盛塾などでも教鞭をとる。

 

http://aoyamashachu.com/

 

三条市、那須塩原市、川崎市、沼田市の経済活性アドバイザーとして、地域活性化の活動、また、国会(内閣委員会)での公務員制度改革についての意見陳述など、政策支援の活動にも従事。著書は「やり過ぎる力」など多数。


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杉村:前回は、“リーダー論”についてお話をお聞きしましたが、最終回では、朝比奈さんが官僚時代に立ち上げられた『プロジェクトK』(新しい霞ヶ関を創る若手の会)で行われてきたこと、またその後に「青山社中」を設立され、現在どのような活動をされているかお聞かせください。

朝比奈さんは『プロジェクトK』の初代代表でした。改革案を実名入りで書籍にされ、世間に問いかけられましたね。

朝比奈:『プロジェクトK』は留学から帰ってきた2003年に立ち上げたのですが、ほとんどの省庁から若手官僚が参加してくれました。新たな司令塔の設置(総合戦略本部の設置)や人事制度改革(公務員制度改革)、それに日々の仕事の進め方(業務改革)について具体的な提案をして、その実現を訴え続け、さらには、改革の具体的な進め方について一歩突っ込んだ提案もしました。

このような活動が、一部において、公務員制度改革や民主党政権での国家戦略室の創出につながりましたが、7年続ける中で、霞ヶ関改革だけをやっていても国が良くなるのだろうか?と思い始めるようになりました。


―― 

杉村:朝比奈さんは「この国と社会のために働くことが、自分を幸せにすること」だと活動されてこられたのですよね。

朝比奈:経産省には14年くらいいましたが、2010年に退官し、『プロジェクトK』の仲間と、同年『青山社中』を設立しました。

初めは、いろいろな政党や政治家の政策を作ったり、調査をしたりすることがメインの仕事でしたが、同時に、日本にはリーダー人材が足りないということで、人材育成を目的にした「青山社中リーダー塾」を開講しました。日本に真のリーダーが少ないという厳しい現状をきちんと受け止めながら、リーダーの育成をし、政策提言をしていかなくてはいけないと思いました。


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杉村:リーダー塾ではどのような人材を育てているのでしょうか?

朝比奈:出世や偉くなることを目指す人材ではなく、“自分の志を実現できる人材”を目指しています。変革者、チェンジメーカーになれと。

今の時代のように、変革しなければならない時は近道を求めるのではなく、大局観を備え、問いと解決策を自ら作っていくリーダーが必要ではないかと常々感じています。自分が動くことによって周囲に影響を与える人になってほしい。何かを始める以上、そういう覚悟を持つ人になってほしいと願っています。


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杉村:朝比奈さんはリーダー育成や政治家政党向けの政策立案を目指す一方、NPO法人 『地域から国を変える会』の理事長を務め、4つの市で経済活性アドバイザーをされているなど、地域のことにも深くかかわっていらっしゃいますね。

現在の青山社中の主な事業を教えてください。

 

朝比奈:青山社中は国や社会を変えていこうと、現在いろいろな事業をしています。一つは前述したとおり『青山社中リーダー塾』などの教育事業で、その他、青山社中リーダーシップ公共政策学校も開講し、BBT、中央大学でも教えています。リーダー塾では、座学として私が1年間教鞭を取ります。その後、塾生は実際に「自分のやるべきこと」にチャレンジしていきますが、実際に人脈を紹介したり、塾生のやりたいことを4年間支援していきます。実は、リーダー塾で塾生と議論をしていたら、「日本の輸出依存度はたかだか2割じゃないですか。グローバルも良いが地域はどうするんですか?」と言われて、日本では地域活性がいかに重要かということに気づかされたのです。

それで塾生たちとNPO法人『 地域から国を変える会』も立ち上げました。地域の個性こそが日本の力ではないかなと。その他、私が塾生と一緒に活動をしている例が 『一般社団法人 日本と世界をつなぐ会』。具体的にはアウトバウンドで、日本の良いものを海外で販売するなどの事業ですね。

また、昨年は北京で「日中若手リーダー会議」を開催するお手伝いをしました。


―― 

杉村:いろいろな地域のアドバイザーになられているそうですが、どのような地域でどのような事をしているのでしょうか?

朝比奈:それこそ無数にたくさんの事をやっていますが、たとえば新潟県三条市では、商店街の活性化からスタートして、市全体の活性化まで、市長とも協力しながらいろいろ進めてきました。同時に那須塩原市では、新幹線の駅前開発にも取り組んでいますし、川崎市では商工会議所を舞台に、民間人30人ほどで、中小企業振興のための条例案について議論し、その後、役所との折衝や条文の作成などもやりました。

群馬県沼田市では『ぬまた起業塾』の塾頭になりました。企業誘致も重要ですが、なかなかそれが望めない時世では、まずはリーダーシップをもった人材をいかに多数育てるかが大切だと思います。ゼロから起業する人だけではなく、第二創業したい人も含めて、「自分たちの町を復活させる」というマインドセットを創ることが大事だと思っています。「自分たちの足で立つ」という思いを持った人材をどれだけつくるかが地方創生の鍵ですね。


―― 

杉村:たくさんの活動をなさっていらっしゃるのですね。個人の育成、地域の活性化、国の政策と本当に素晴らしいですね。

朝比奈:塾生が育つことで、青山社中の活動も広がりを見せています。

あと、あのエズラ・ヴォーゲル教授に講演を依頼してフォーラムを開催するなどの行事(青山社中フォーラム)もあります。起業以来30回やっており、安倍晋三氏を含め、政策、ビジネス等の各界のリーダーをお招きしています。


―― 

杉村:朝比奈さんは、「社会をより良い方向に導く」ために、自らがリーダーとして始動されていらっしゃるんですね。そして人材の育成を通じて、その輪を日本から世界へ、確実に広げられていっている朝比奈さんのご活躍が益々楽しみです。魂に火が付くようなお話を沢山聞かせていただき、有難うございました。


【最後に】

私たちジャパンビジネスラボも、「我究館」「プレゼンス」を通して人材育成を行ってきていますが、私たちが目指す人物像である「強い意志を持ち、思いを行動に移していける人材」とは、まさしく、朝比奈さんが掲げられている“リーダー像”と重なることを感じました。